観察日記

頑張って生きてます

無題

道場で稽古をしていると、ふらりと前髪の長い女の子が入ってきた。服はボロボロだったが、顔立ちは整っていて汚らしい印象はなかった。門下生が少なく道場にいるのは自分と、奥の座敷に師匠がいるだけだったので俺が話を聞いてやることにした。大方腹でも空かせた孤児か何かだろうと思ったが、どうやら違うようだ。最初はボソボソと途切れ途切れに話すので何を言っているのか分からなかったが、要はうちの師匠と闘いたいということらしかった。道場破りだ。こんなことははじめての上に相手が女の子なのでどうしたものかと思ったが、門前払いもかわいそうに思ったので一応師匠に聞いてみることにした。師匠は話を聞くと何も言わずに立ち上がり稽古場まできて女の子をじっと眺めると一言「いいよ」と言った。

 

試合が始まると、衰えているとはいえあの師匠と互角に女の子がやり合っていて唖然とした。さっきまでボソボソと喋っていた子と同じ人物とは思えない声を張り上げて次々連打を繰り出している。とはいえ流石に疲れが見え始めると、防戦一方だった師匠の方が押し始めた。「ほらほらどうした」なんて喋りながら闘う余裕すらまだあるようだ。すると突然師匠がつるっと足を滑らせ、前のめりで右肩から思い切り倒れてしまった。試合は一時中断された。右肩が完全に外れ逆方向に折れて、関節に大きな窪みができてしまっている。塗らせた手ぬぐいを差し出したが「おう、ありがとな」と言った後すぐ床にポイと捨てられてしまった。ゴリゴリと鈍い音を立てながら自力で肩をはめた後「まぁ、釈然としないだろうがお前の勝ちだよ」と言うと女の子は一礼して出て行ってしまった。自力ではめられたとはいえ真っ赤に腫れ上がっている右肩をおさえながら師匠は座敷へ戻って行った。負けた師匠の方が、なんだか嬉しそうだった。

雑記7

人生の中で若いうちに一年くらいプラプラしている時期がほしい。小学校の頃から何かに追われ続けてるから、なににも追われることのない、自分の好きなことだけ考えていられる一年があってもいいと思う。そんな話を友人にしたところ、3年で仕事やめてシェアハウスにでも住むか という話になった。3年後、俺にしごとを辞めて、フツーの人生のレールから外れる勇気があればいいなと思った。

雑記6

ブログは書くよりも見る方が100億倍くらい好きだ。ギャルのだろうとお堅いのだろうとメンヘラのだろうとサブカルチックな物だろうとそれぞれ独特の文体があって、誰かのを真似たものだろうとその人独自の雰囲気が出てると思う。有名人のブログとかより一般人の普通の日常が描かれているブログが好きだ。テレビでいつも見ている芸人が、その芸人のラジオを聴くと印象が180度変わって「テレビでは道化を演じているんだな」とか思いながら見ちゃったりして、なんだか古くからの友達のような感覚になっちゃう、ってのはラジオ聴く人ならわかってくれるかなと思う。ブログもその感覚ににてて、書いてる人が本当に思ってることを、書いている人なりの言葉で伝えてくれるから、ブックマークして更新されるのを何回も読んでいくうちに、古くからの友達のような感覚に陥る。

全く知らない人だけど、同じ地域に住んでいるって理由だけで10年弱ずっと追いかけているブログもある。不定期ではあるけど今も更新され続けている。書かれている事が嘘か本当かは置いといて、その人の過去にあったこと、未来の展望、今、全部知っている。多分彼のリアルの「知り合い」くらいの人とだったら俺の方が何倍も彼について知ってるし、こういう時にどういう考え方をするか、何で今悩んでいるか、彼女いるかいないかまで全部わかる。

もう何年も更新されていないブログもある。気が向いたときに開いてみるけど、やはり更新はされていない。好きな音楽について、その音楽と出会ったときのエピソードや、その後どんな時にどんな感情で聞いていたかを細かく書いている、俺の好きな超個人的で文章量の多いブログだった。ずっと追いかけてきたブログの主には、やっぱり特別な感情があるし、幸せになっててほしいなと思う。

毎日のように更新されるブログよりも、数ヶ月に一回でいいから、自分の中の感情をうまく文章に落とし込んで がっつり文字の書かれたカロリーの高そうなブログの方が好きだ。

とにかくブログは見るのが好き。

雑記5

みんな職場に無理矢理にでも好きな人作ればいいと思う。まぁまぁ楽しい。

半分ふざけてある人を可愛い可愛い言ってたらいつの間にか俺がその人の事が好きみたいな噂が蔓延していて、なんだかその話題で会社が持ちきりのようで、さすが超級中小企業だなという感じだ。だが話を合わせるってのが辛すぎる人種に生まれた俺にとってこの状況はとてもラッキーなようである。何話してもその話題になるし、こっちが黙ってても色々と聞いてくるので会話が楽だ。特に俺の苦手とする女との会話もこれで多少解消した。作戦会議とか言って飯に誘われたりしたのは嫌だったが、通勤する億劫さの一つが少し和らいだ。

おすすめする。

雑記4

 考え過ぎるのはいけないなと思った。遊び以外のことは単純に単純に考えてテキトーに往なしていきたい。

昨日は会社の健康診断で、わざわざそれだけをしに朝早くから電車に乗って会社の近くの病院まで向かった。駅から地味に遠い。歩いて20分くらいかかった。空いていたので思っていたよりもあっという間に終わってしまった。そのまま下北沢に買い物に行こうと思っていたのだが早すぎて店がまだオープンしていないのでドトールで時間を潰す。頃合いを見て、下北沢へ向かう。俺は神奈川に住んでるので、片道1時間半くらいかかってしまう。昼前で電車はガラガラ。ずっと座っていられた。

往復3時間かけて、向かう店はある古着屋さん一軒だけ。そこはおしゃれすぎて入れないオーラがムンムンではあるんだけど、店員さんがあまり話しかけてこなくて、良い。客も俺以外ほぼおらずゆっくり試着とかもできた。1時間くらい悩んで、服3着、帽子2つ買って店を出た。もう用はないのでソッコーで駅に向かい電車に乗った。

最悪だった。電車があり得ない時間遅延していた。仕方なく藤沢で一回降りて、本屋でずっと読んでなかったアイアムアヒーロー16巻から最新刊まで買って、またドトールで2時間くらい時間を潰した。やっと電車が動き出し、帰った。

その夜、飲みにいこうと誘われた。相当疲れていたが、中学以来会っていない奴が1人くるというので、行くことにした。

ソイツは、俺の記憶や聞いた噂では、勉強ができて、いい高校大学に進学して、友達がいないわけでもなく、大学の単位を3年で取り終えてしまうような優等生だった。

本人に話を聞いてみると、ほぼ正解であった。が、その後就職 というか就活すらせずに今に至るらしかった。理由を聞くと、怖いから という。今までバイトもした事ないし、受験も試験だけで受けてきたから面接が怖いらしいのだ。とりあえずバイトから、と進めてもバイトの面接も怖くて受けられないと言う。これは結構重症かなと思い、彼に色々と喋らせてみると、俺は犯罪者になってもおかしくない  親を恨んでる  自分の顔面を殴る  等々ヤバめな単語がポロポロ溢れ出した。正直に、「もしかしたら鬱とかそういう病気かもしれないぞ」と言ったら「もう病院行ってるよ。8月から新しい病院行く」と言われた。なんだかゾッとしてしまった。23時くらいから集まって、朝4時くらいまで元気付けようと頑張ったが、全て逆効果だったのかもしれない。

自転車を引いて4人で帰る。空は群青色で東側はもう白んできていた。

雑記3

買ったまま読んでない本が増えてく。読み始めれば長時間読めるんだけど、手に取る気力がない。社会人1年目のこの時期はみんな仕事でいっぱいいっぱいだと思う 少なくとも俺はいっぱいいっぱいで、休みの日なんて 寝っ転がってると一瞬で終わる。休日がもったいない なんて事も思わない。中学、高校、大学 たとえ嫌なことがあっても あと数年で終わるから、目に見えるゴールがあるから頑張ってこられた。


中学の時は、高校に行けば 登下校中どこでもすきに寄り道できるし、軽音楽部があるから そこに入ればきっと楽しいと思ってた。高校の時は、大学は自分で時間割が決められて、自由にアルバイトもできて、好きなことが好きなだけできるからきっと楽しいと思ってた。大学に入ると、社会人になれば、あとは働くだけで、レポートやら単位やらに縛られずに、金が貯まってくからきっと楽しいと思ってた。自分のアホさを時代が変わるたびに思い知らされた。社会人になった今、逃げ道もなく、ゴールも遠すぎて見えない。走り切れる気がしない。

心に余裕を持たないといけない。休日に1冊本が読めるくらいの。手始めに、読みやすそうなドン・キホーテでも読もうと思う。本の中でいいから、冒険がしたい。

無題

自然と目が覚めた。携帯のアラームが鳴る2分前だったので、それを消した後ぼーっと天井を見つめる。このままじゃ確実にまた寝てしまうので、布団を蹴った。単位がかかっている。遅刻するわけにはいかない。急いで用意を済ませ、ベランダでタバコを吸っていると、突然大雨が降り始めた。2本目のタバコに火をつけたばかりだったが、消して中へ戻った。

窓越しに雨を見ながらYUKIの66dbを聴いた。高校の頃から、雨の日にはよくこの曲を聴いている。俺は何かをしながらじゃないと音楽を聴いていられないタチで、じっと家で音楽を聴くことはまずない。移動中、風呂、タバコ吸いながら、とにかく何かしながら曲を聴く。学校行事から、プライベートの予定まで、殆ど雨で潰れてきたほどの雨男である俺は、必然的に雨の日の移動中に音楽を聴く機会が多くなり、66dbを聴く機会も多かった。この曲をきくと、雨でなくともバスや 電車の車窓から見る 雨の景色を思い出す。

本当に大雨だ。隣の家の畑から泥水が溢れかえっている。天気予報は見てないが、どうやら にわか雨ではなさそうだった。いつもは自転車で駅まで行くが、この雨では無理そうなのでバスで行くしかない。今からバスで行くとすると駅まで倍は時間がかかる。

上着を脱いで布団に寝転ぶ。雨が降ってたから、俺は単位を2つ捨てた。

2014年冬頃。